瀬能は、いつもそこで甘いキスから不機嫌なキスに変わる。
ヤケになったように少し荒いソレをされるときが、唯一わたしが優勢になれる時間。
誰が呼ぶもんか。ばあか。
少し笑みが溢れて、そしてまた「笑ってんなよ」と口を塞がれる。
認めない。認めるわけにはいかない。
誰にでもこんなことをするこの最低な男に、わたしの心は囚われてなんかない。
……絶対に、ないんだから。
*
*
*
「ねぇ瀬能、アレ聞きたい」
「……っとに、お前は要望が多いな」
崩れたリップを塗り直したあとで、わたしはもうひとつ瀬能に"返却"求めた。
キスもそうだけど、どちらかといえばこっちが本命だったりする。
わたしが、瀬能遊という男と出会ったきっかけ。お気に入りのもの。



