そんなぽっかりと空いた心のすき間はもう埋まることはないのだと涙をぬぐった。



「響くん……」


僕の名前を呼んだのは、目元を腫らした理央のお母さんだった。


「すみません、さっきはあんな子どものように泣いてしまって」


「良いのよ、むしろすっきりしたの。ね? あなたもそう思うでしょ?」


「ああ、そうだな。響くんがずっと泣かずにいたから妻と心配していたんだよ」


理央のお父さんは疲れ切った表情を持ちながらも僕に笑顔を浮かべた。

急に理央がいなくなって息をするのも精一杯なはずなのに、僕のことを心配してくれていたなんて。


「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって」


手をグッと握りしめた時、手の甲にいくつもの爪の痕が残っていた。

無意識に泣いてはいけないと、皮膚に爪を食い込ませていたのかもしれない。


「全然迷惑なんかじゃないわ。お葬式に無理やり呼んだのは私たちだし、それに理央も響くんが来てくれて嬉しいと思っているはずだもの」