「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 クルレイド様の表情は、とても暗かった。
 それはこれから話すことが、良いことではないからなのだろう。
 私は、ゆっくりと息を呑む。一体バルガラス子爵には、何があったのだろうか。

「彼の息子……ザルバスも伯爵夫人と関係を持っていました。ただ、彼は夫人から飽きられて捨てられたようです。そしてそのまま……」
「あっ、バルガラス子爵家って、確か……」

 そこで私は、あることを思い出した。
 一年程前だろうか。聞いたことがある。バルガラス子爵家の長男が病気で亡くなったということを。
 しかしそれは、病気などではなかったのだ。彼は恐らく、ランカーソン伯爵夫人に見限られたことを悔やんで、自ら命を絶ったのだろう。

「クルレイド様、その話は本当なんですか?」
「……ザルバスは、気弱な男でした。しかしながら、時々妙に思い切りがいいことがあった。様々な状況から考えて、まず間違いないかと」