「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「心当たりは何人かいます。しかしながら、今の僕にはその人達がどちら側なのか見抜く自信がない。何しろ父上のことも見抜けていませんでしたからね……」
「なるほど……確かに、こちらの動きを彼女に悟られるのは避けたいですからね」
「エルライド侯爵は、その辺りも抜かりないでしょうが、僕の人脈に頼るべきではないかもしれません。ただ、一人だけ心当たりがある人物がいます」

 クルレイド様は、私からゆっくりと目をそらした。
 その後彼は、押し黙る。その人の名前を出すことを、躊躇っているのだろう。

「バルガラス子爵なら、手を貸してくれるかもしれません」
「バルガラス子爵、ですか?」
「ええ、彼はかつてランカーソン伯爵夫人と関係を持っていると噂されている人です。まあ、本当に持っていたと考えていいでしょう」
「そのような人が力を貸してくれるでしょうか?」
「それだけの事情があるのです」