「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「……でも、お父様、かっこよかったですよ」
「そうか。お前にそう言ってもらえたなら、下らないことをした甲斐もあったというものか」

 私が称賛の言葉を口にすると、お父様は少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべてくれた。
 いつも頼りになるお父様は、私が最も尊敬できる人だ。ロンダーもそんなお父様の背中を見て育って立派になったし、やはりエルライド侯爵家は安泰だろう。

「……さてと」

 そこで私は、ゆっくりと後ろを向いた。
 私の目線の先には、項垂れているアルペリオ侯爵令息がいる。ランカーソン伯爵夫人に見限られて、すっかりと意気消沈しているようだ。

「……アルペリオ侯爵令息」
「レ、レミアナ……」

 私が近づくと、彼は少し嬉しそうな顔をした。
 それは私に対して、まだ期待しているからなのかもしれない。
 縋りつくようなその視線に、私は呆れてしまう。私は既に、彼を兄などとは思っていない。