「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 それはつまり、経験値の違いなのだろう。私達と夫人が踏んだ場数が違うように、お父様と夫人が踏んだ場数も違うのだ。

「こ、侯爵だかなんだか知りませんが、あなたなんて簡単に潰すことができます」
「そうか。それならやってみろ」
「え?」
「潰せるのだろう? 望む所だ。やってみてくれ」

 お父様の言葉に、夫人は目を丸めていた。
 まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。それが顔からわかる程に、間の抜けた表情をしている。

「どうした? やらないのか? やる勇気もないということか」
「そ、そんなことはありません! 私は、私は……」
「つまらん女だ。それで、言いたいことはもう何もないのか? だったらさっさと……この場を去れ!」
「ひっ……!」

 お父様の怒号に、ランカーソン伯爵夫人は一歩後退った。