「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「ええ、その覚えはあります」
「あの時と比べて、二人とも随分と大きくなったものだ。あの頃は本当に楽しかった」

 ランペシー侯爵は、昔を懐かしみ微笑んでいた。
 その頃はきっと誰も、こんな結末になるなんて想像していなかった。私達にとって、これは悲しい別れである。
 ただそれでも、私達は前に進まなければならない。貴族として生きるということは、きっとそういうことなのだろう。

「……レミアナ様、大変です!」
「え?」

 私がそんなことを思っていると、部屋の戸を叩く音と大きな声が聞こえてきた。
 恐らく、使用人の誰かが来たのだろう。それも声色からして、非常事態を知らせに。

「な、何かあったんですか?」
「夫人が……ランカーソン伯爵夫人が、訪ねて来たのです!」
「……え?」

 使用人の言葉に、私は思わず固まってしまった。
 ランカーソン伯爵夫人の訪問、それはまったく予想していなかったことである。