「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 アルペリオ兄様がお父様に直接謝罪する。そんな機会は訪れないと思っていた。
 はっきりと言って、兄様がそんなことをする意味はないからだ。あの婚約破棄は、私達との決別を表している。二度と関わらないと決めていなければ、あんな提案はできないだろう。
 しかしながら、アルペリオ兄様がそうであってもそうでない人がいた。その人物とは、彼の父親のオルドーン・ランペシー侯爵である。

「オルドーン……」
「ラングル……」

 二人の侯爵は、向き合ってゆっくりとお互いの名前を口にした。
 侯爵に対してもかなり怒っていたはずのお父様は、微妙な顔をしている。
 当然のことながら、心の底ではかつての親友を憎み切れていないのだろう。今回の件は、彼の息子の暴走である。それはお父様だって、わかっているのだ。

「……いや、エルライド侯爵。今回の寛大な措置には感謝したい。こうして謝罪の機会を与えていただけたのは、ありがたく思っている」