「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 ランカーソン伯爵夫人の守りは、盤石だった。
 あの歪な夫人は、ギルドルア様の言う通り怪物だ。本当に、なんとも厄介な存在である。

「とはいえ、有力者達も愚かな選択ばかりしているという訳ではない。ランカーソン伯爵夫人の悪辣さを息子に教える者もいるようだ」

 ギルドルア様は、そこで笑顔を浮かべていた。
 彼は、結構顔に出やすい性格であるようだ。先人達の行いに対する表情の変化が、とてもわかりやすい。

「当然のことながら、父親の実感がこもっている言葉を聞いた者は余程のことがない限り、ランカーソン伯爵夫人とは関わらない。僕の友人は、実際にその例だ」
「なるほど……賢明な判断ですね」
「ああ、しかしながら、そのように判断することができない者もいるのは事実だ。その例は、君の元婚約者ということになるだろう」
「アルペリオ兄様ですか……」