「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「さて、二人にはお礼を言わなければならないね。感謝しているよ。今回の件には、流石の僕も焦ってしまった」
「兄上が焦るなんて、珍しいこともあるのですね」
「そういう訳でもないさ。僕もこう見えて、いっぱいいっぱいだからね」

 クルレイド様の言葉に、ギルドルア様は余裕を含んだ笑みを返していた。
 それはつまり、本当にいっぱいいっぱいという訳ではないということだろう。
 ただ裏を返せば、今回の件はそんな彼が本当に焦っていたということになる。ランカーソン伯爵夫人が妊娠していたこと、それは本当に予想外のことだったのだろう。

「……結局、あの子の父親は誰なのでしょうか?」
「ふむ……」

 そこで私は、思わず疑問を口にしていた。
 それに対して、ギルドルア様は眉をひそめている。その仕草が、私は少し気になった。