「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 そのためにも、私達はマルセアさんと会うべきだろう。まずは彼女と話をつける。断られたらその時はその時だ。まあ考え直すとしよう。

「クルレイド様も、それで構いませんね? 少々長い旅をすることにはなりますけど」
「大丈夫ですよ。あなたと一緒なら旅も一瞬です」
「それでは、そういうことにしましょう」

 私とクルレイド様は、そう言って頷き合った。
 それから私は、ランカーソン伯爵夫人の娘の方に目を向ける。その子はベビーベッドの上で、幸せそうに眠っている。

「本当に可愛い子ですね……」
「……今度来た時には、抱いてあげてください」
「ええ、そうさせてもらいます。それでは、私達はこれで」
「どうかよろしくお願いします」

 ゆっくりと頭を下げるランカーソン伯爵夫人から、私達は背を向けた。
 この極秘の任務は、しっかりとやり遂げる必要がある。責任は重大だ。私達の働きで、あの無垢なる命の未来が決まるのだから。