「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 ランカーソン伯爵夫人は、自嘲気味に笑みを浮かべていた。
 マルセアさんはランカーソン伯爵夫人の落ちぶれっぷりに、失望したような表情を浮かべていた。あれは大切だったからこそ、出る表情であっただろう。
 そう思っていたのは、夫人も同じだったということだ。それでも夫人は、マルセアさんを裏切って、あの生き方を選んだ訳だが。

「その子をマルセアさんに任せますか?」
「……そうなってくれるならいいとは思います。しかしながら、彼女がそれを認めてくれるでしょうか?」
「それは頼んでみなければわからないことです。あなたの身内といえる存在がマルセアさんだけであるといなら、まずは話をしてみるしかありません」
「……お願いできますか?」
「それが今の私達の仕事ですから」

 ランカーソン伯爵夫人のことを許してはいない。彼女がやったことは、未だに私の心に大きな傷を残している。
 しかしそれでも、生まれた子供に罪はない。この子が幸せになれる結論を、私は目指すつもりである。