「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「後になって怖くなってきたんです。自分がそんな判断をしたということが……」
「クルレイド様……」
「覚悟は決めたつもりでしたが……」

 クルレイド様は、震えていた。人の命を奪うこと、その恐怖に彼は怯えているのだ。
 それは人間として、当然のことであるだろう。人の命を奪うということは、それ程に重たいことなのだから。
 一時とはいえ、クルレイド様はそれを味わった。優しい彼は、その重さに耐えきれていないのだろう。

「クルレイド様、失礼します」
「レミアナ嬢……?」

 私は立ち上がってクルレイド様の隣に腰掛けた。
 そして彼の手に自分の手を重ねる。その手は少し冷たい。
 それだけあの出来事は、彼の心に傷を残したということなのだろう。