「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 そのまま私は、クルレイド様がいる方向に向かう。その方向では、クルレイド様が兵士の剣を抜いている。この場において、誰よりも早く彼は行動を開始していたのだ。
 それは私と通じ合っていたからだろう。他の人は、私がこんな行動をすることは知らなかった。クルレイド様だけが、こうなることをわかっていたのである。

「レミアナ……僕を騙したのか!」

 私の後方にいるアルペリオ侯爵令息は、周囲を見渡していた。
 恐らく彼は、人質を探しているのだろう。それを防ぐためには、その右手に携えたナイフをなんとかしなければならない。

「……させるか!」
「あがっ!」

 私がそう思った瞬間、クルレイド様がその件をアルペリオ侯爵令息の右腕に振り払った。
 ただ彼は、切ることを選んではいない。あくまでも拘束するために、表面で叩きつけることを選んだようだ。

「くそっ……!」
「動くなっ!」
「おごっ!」