「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 しかし反論が出て来なかった。恐怖の感情が、私に声を発することをできなくさせているのだ。

「貴族の地位は捨てることになるけれど、まあなんとかなるだろう。僕が働くから、君には家事全般を頼もうかな? 料理や裁縫は得意だっただろう。君は手先が器用だったからな……」
「……あっ」

 そこで私は、あることに気付いた。
 クルレイド様が、真っ直ぐに私のことを見ているのだ。
 その目を見ていると、なんだか恐怖が薄れてきた。全身に血が通っていくのを感じる。先程まで動かないと思っていた体が動く。

「アルペリオ侯爵令息、あなたの蛮行は許されるものではない」
「……さっきからうるさい奴だな。君は確か、第二王子のクルレイドか。レミアナに視線を向けて、何を考えているんだ?」

 クルレイド様が言葉を発すると、アルペリオ侯爵令息は不機嫌さを露わにしていた。