「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「いい気味?」
「ここに来る前に、父上に報いを受けてもらったんだ」
「……え?」

 私は、アルペリオ侯爵令息が軽い口調で述べたことに固まっていた。
 彼が言っている報いとは、一体どういうものなのだろうか。それを考えると、心が沈んでいった。
 まさか、アルペリオ侯爵令息は実の父親を手にかけたのだろうか。今の彼なら、そうするかもしれないと思える。

「まあ、そんなことはどうでもいいことさ。君と僕には関係がないことだ」

 そこで私の体は、震え始めていた。
 私は今、恐怖している。アルペリオ侯爵令息という邪悪な存在に。

「これから二人で、どこに行こうか。遠い国に行くのがいいかな? そこで二人でやり直すとしよう。僕達は本当の家族になるんだ」

 アルペリオ侯爵令息は、とても優しい声色でそんなことを言ってきた。
 当然のことながら、私は彼と一緒に行くことなど望んでいない。