「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 私とクルレイド様は、部屋の戸を叩く音に少し驚いた。
 しかしすぐに私は思い出す。そういえば、婚約の話のためにギルドルア様が席を外していたのだ。

「ギルドルア様でしょうか?」
「ああ、兄上、もう話は終わりましたよ」
「あ、いえ、ギルドルア殿下ではございません」
「おや、使用人の方でしたか? それなら、どうかしましたか?」

 部屋の戸を叩いたのは、ギルドルア様ではなかった。私の予想は、的外れだったようだ。
 だが、そうなると使用人が訪ねてきた理由が気になってくる。この状況で訪ねてくるとなると、余程急ぎの用でなければならないと思うのだが。

「御歓談中申し訳ありません。ただ、アルペリオ侯爵令息が訪ねて来たため、お二人には早急に知らせておいた方がいいと思いまして」
「なんですって?」

 使用人の言葉に、私とクルレイド様は顔を見合わせた。