「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「大体あの女は、ずっと私に迷惑をかけてきたのだ。平然と浮気をして私を裏切る最低の女だ。あの女と結婚したのは、この私の人生において最大の汚点といえるだろう」

 ランカーソン伯爵は、夫人のことを批判し始めた。
 それはある種のパフォーマンスなのだろう。私達の同情を誘っているのかもしれない。
 しかし、私達は知っている。そもそも彼が、夫人を貴族の世界に引きずり込んだことを。そんな彼が何を言ったって、私達の心には響かない。

「貧乏くじにも程がある。私はただ、あの女の実家への義理と恩義で結婚しただけだ。それがどうして、こんな扱いを受けなければならないのだ」
「……」

 ランカーソン伯爵は、悔しそうな表情で言葉を発していた。
 そんな彼を強く睨みつけているのは、クルレイド様だ。
 彼の視線には、怒りのような感情が読み取れる。いや、実際に怒っているのだろう。伯爵の身勝手過ぎる態度に。