「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 考えてみれば、それは当然のことかもしれない。夫人の裏にはずっとその人物がいたのだから、それをギルドルア様が放っておくはずはないだろう。

「あ、あの人を代わりに差し出せと言っているの?」
「ええ、そうです。簡単なことでしょう。真の首謀者がランカーソン伯爵、あなたの夫であるというのは誰もが納得する結論です」
「そ、それは……」

 ランカーソン伯爵夫人は、ギルドルア様からゆっくりと目をそらしていた。
 彼女の表情からは、迷いのようなものが読み取れる。実際に迷っているのだろう。夫であるランカーソン伯爵を売るかどうかを。

「あなたがランカーソン伯爵を首謀者として告発してくれるなら、あなたの罪を軽くしましょう」
「罪を軽く……」
「あなたにとっても、悪い話ではないはずだ。証言するだけで、この状況を覆せるのだから」

 ギルドルア様は、ランカーソン伯爵夫人に優しく語りかけていた。