「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「僕はこれでも必要以上に命を奪おうとは思っていません。無駄に縄を使うのは主義に反しますから、あなたのことはできれば助けてあげたい」

 ギルドルア様は、ランカーソン伯爵夫人に冷たい視線を向けていた。
 口では色々と言っているが、彼は夫人の命がどうなろうとどうでもいいのだろう。それはその表情から伝わってきた。
 つまりこれは、交渉の一環と考えるべきだ。彼は夫人に命と何かを天秤にかけさせようとしている。

「ど、どうすれば私は助かるというの?」
「問題となっているのは、今回の件の首謀者です。命を奪う必要があるのは、その者だけです。ああ、実行犯であるドナテス・マドラド子爵令息も葬り去りますが、彼は実際には死にませんから、ご安心を。まあ、顔や名前は変えることになるでしょうが」

 前提として、ドナテス子爵令息はギルドルア様の手の者だろう。