「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「そ、それは……」

 マルセアは、ゆっくりと長い溜息をついた。
 確かに、彼女の言う通りであるだろう。夫人がこうやってここにいる以上、彼女は失敗したとしか言いようがない。
 身の程を弁えていれば、もっといい結末があっただろう。彼女は調子に乗り過ぎて、見誤ったといえる。

「それになんだい。あんたは随分と安い女に成り下がったようだね」
「や、安い女?」
「あんたは誇りというものをいつの間にか失ってしまったんだろうね。昔のあんたには矜持というものがあったはずだ。全ては、あのランカーソン伯爵に会ったからかね。男を見る目は、人並み以上にあったと思っていたが……」
「わ、私は……」

 マルセアさんの言葉に思う所があったのか、夫人は震えている。
 かつての彼女は、貴族が利用する程に高名な娼館で働いていた。娼婦としては、一流だったといえるだろう。