「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「あなた達に、何がわかるというの!」

 ランカーソン伯爵夫人は、私達の前で激昂していた。
 ギルドルア様の哀れむ視線によって彼女のコンプレックスは刺激されて、爆発したということなのだろう。

「私には力があった。ここまで上り詰めることができるだけの力があったのよ! 一介の娼婦には留まらない力があったのだから、それを行使することは当然のことでしょう!」
「……その結果がこれかい?」
「なっ……!」

 夫人の言葉に答えたのは、マルセアさんだった。
 彼女は指で煙管を回しながら、夫人を見つめる。その視線もやはり、哀れみの感情が入っているような気がする。

「あんたには確かに才能があった。それは私だって理解しているよ。それで上を目指したいと思うのも、当然の志だ。ただね、あんたは高望みをし過ぎたのさ。だって、そうだろう。あんたに力があるというなら、こんな風に牢屋の中にいるはずがない」