「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 昔のことを語る彼女は、懐かしそうにしていた。もしかしたらマルセアさんにとって、夫人は妹のような存在だったのかもしれない。悲しそうなその表情から、私はなんとなくそんなことを考えてしまった。

「成長した彼女は、客を取るようになりました。その頃には私も娼館を先代から託されて、それなりの地位に就いていました。この子は娼館でも人気で、高名な方の接客もしていました。そんな彼女の客の一人が、ランカーソン伯爵でした。当時はまだ伯爵令息でしたが……この子は彼のお気に入りだった」
「マルセアさん、そろそろ僕が引き継ぎましょう。そこからは貴族の世界の話ですからね。ただ、僕が把握していない部分については、補足をよろしくお願いします」
「ええ、心得ています」

 そこでずっと黙っていたギルドルア様が口を挟んだ。