「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 私達の前にアルペリオ侯爵令息と一緒に現れたように、彼女は不倫を隠さないのだろう。様々な人に目撃される以上、それを誤魔化すことは不可能なのだ。
 それは彼女の余裕の表れだったのだろうが、迂闊としか言いようがないことだった。こういう時に、彼女は一気に不利になってしまう。

「私は彼にそのようなことを吹き込んだ覚えはありません」
「なるほど、つまりあなたは若い燕に全ての責任を押し付けて逃げようという訳ですか……」
「そんなつもりはありません。事実無根だから、そう言っているだけです」
「あなたは、一人の若い子爵令息の人生を狂わせた! 彼を誑かした罪は大きい」

 ドナテス・マドラド子爵令息は、まだまだ若い。私と同年代くらいの年齢といえるだろう。
 そんな彼が、伯爵夫人に誘惑されて関係を持った。そして彼女に唆されて、犯行に及ぶ。それはとても、自然な流れであるように思える。