「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

 駆けつけてきた兵士達によって、ドナテス・マドラド子爵令息は拘束された。
 どうやら彼も、ランカーソン伯爵夫人が関係を持っていた男性の一人であるらしい。今日は二人で、市に出掛けてきたようだ。
 そこで偶然第一王子を発見して、夫人のとある目的のために連れ去ろうとした。それが、ドナテス子爵令息の主張だ。

「お忍びとはいえ、一流の護衛を同伴している第一王子を一子爵令息拘束するなんて、そんなことがある訳がないでしょう?」
「ふふっ……」

 クルレイド様の言葉に、ギルドルア様は笑っていた。
 危機に瀕していた彼は、涼しい顔をしている。やはり彼にとって、一連の出来事は予想通りのものでしかなかったのだろう。

「その点に関しては、僕にも落ち度がある。今回は、本当に少人数しか護衛をつけていなかった。本来であれば、このような事態は避けられただろうに……」