「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

「まあ、そんな所です……ああ、そうだ。兄上を知りませんか? 探しているんです。もしかしたらあなたの店に来ていたりしませんか?」
「ギルドルア様、ですか? ええ、確かに先程までいましたよ」
「兄上はどちらに?」
「えっと、市に行くと言っていましたが……」
「市、ですか……」

 定食屋の店主からは、とても有益な情報が得られた。
 これは幸運である。王都を探し回る手間が省けた。

「店主、ありがとうございます。お陰で――」
「きゃあああああああああああああああああ!」
「――え?」

 クルレイド様は、突如聞こえてきた悲鳴に体を大きく反応させた。
 私とロンダーも、顔を見合わせている。この悲鳴の声は、ランカーソン伯爵夫人ではないだろうか。

「店主、申し訳ないが俺達はこれで……」
「あ、ええ、お気をつけて」
「はい!」

 定食屋の店主の言葉に返事をしてから、クルレイド様は駆け出した。
 私とロンダーもそれについて行く。とにかく状況を確認しなければならない。