後輩に慕われる自分の姿をどうやらかなり鮮明に妄想しているらしい。

千紗はバレー部に入っていて、時期キャプテン候補。スタイルが抜群に良くて何事にもハキハキとした性格だ。だけどこういった可愛らしい憧れは人1倍あるらしい。

「でも私帰宅部だから、多分後輩とはそんな関わりないなぁ〜」

「ああー、残念。玲乃もなんか運動部入ったら? 楽しいよ! 今からでも申請出せば入れ​────」

「いいいいいいいい!!大丈夫!それだけは大丈夫……!」

皆まで聞かずとも千紗の言いたいことは分かったので途中で遮り、全力で手をブンブン、と振って大否定した。

マラソン大会万年ベリの私が運動部に入部した暁には即刻退部する未来が見える。

もちろん自主的に。

私は今までもこれからも帰宅部がお似合いだ。

千紗は高校で出会った友達。

有難いことにマラソン大会という行事は中学までだったらしい。

よって千紗は私の運動神経の悪さをよく知らない。

***

「ねぇねぇ連絡先交換しようよー」

「しよしよー!」

入学式が終わり、教室ではクラスメイトたちがスマホ片手にせわしなくザワザワと騒いでいた。

そんな喧騒から少し距離を置いて私は千紗の席でいつも通りの雑談中。

今日は入学式さえ終われば速やかに帰宅していい、とのことなので気分が軽い。