溺愛彼氏はめんどくさい

「かんなみたいな余裕ある人間になりたい」


「なんや、あたしだって余裕はないよ?」

「うそだー」


「ほんとだよ、日々バイトに推し活にギリギリの生活を送っております……」


胸を押さえてなにやら呟くかんな。


その言葉をほうほうと聞き流し、話し終わるのを待つ。



生粋のオタク気質なかんなは、「推しに貢ぐため」とバイトをしている。


 
「菜柚も今度一緒に行こうね推しのライブ」

「あ!行く行く!」



「……推しって男?」



すぐ横で聞こえた不機嫌な声。

そしてふわっと漂った嗅ぎ慣れた甘い匂い。



「……げ」

「げ、とはなにさ花宮さん?」



そこには満面の笑みのやよいがたっていた。