「あなたが朝比奈さん?」

頭上から聞きなれない声で名前を呼ばれ、

私は渋々教科書から顔を上げる。

「ごめんなさいね、勉強中に」

声をかけてきたのは、美人で噂の安中さん。

安中さんは、私が机に広げた勉強道具に

チラッと目を向けてそう言った。

「……はい。……あの、誰ですか?」

「あなた、最近北斗と仲がいいみたいね」

私の質問には答えず、安中さんは千秋くんの

名前を出す。

……もしかして安中さん、千秋くんのこと

好きなのかな?

……やめておいた方がいいと思うけどな。

「ねえ、どうなの?」

口を開かない私に痺れを切らしたのか、

安中さんはバンッと私の机を叩いて

顔を近づけてくる。