な、ナンパ野郎……?

顔は見えないけど、千秋くんは今、腹黒モードだ。

その証拠に、人気者モードの千秋くんより声が

低くて、私の腕を掴む力も強くなっている。

「ひでぇ……俺、彼女いるのに。ま、いいや。

朝比奈さん、また後でね」

「あ、う、うん!またね、武田くん」

視界が自由な時の記憶を頼りに、見えない武田くん

に手を振った。

「……あ、あの、千秋くん……話して欲しいん

ですけど……」

「無理、あと、もう武田には近づくな。会長命令

だからな?」

「えぇ……?」

もう何が何だかわからなかったけど、とりあえず

頷いておくと、安心したのか、やっと手を離して

くれる。