裏表が激しい生徒会長に目をつけられてしまいました

「でもっ……」

私が引き下がらないことを感じ取ったのか、千秋くんは小さくため息をついてハンカチを差し出してくれる。

「……じゃあ、頼むわ」

「……っ!うん!ありがとう!」

「ハイハイ、ドーイタシマシテー……っマジか……」

「え?」

面倒くさそうな顔が一変して、焦った顔になったから、私も千秋くんの見ている方を振り返ろうとすると、それを防ぐかのように千秋くんは私の頭をおさえつける。

「え、離してよ。私も見たい」

さっきまでの恐怖よりも、今、目の前の千秋くんを焦らせているものを見てみたいという好奇心が勝って、涙が引っ込む。

「ダメだ。絶対。てか黙れっ」

「なんでそんなに小声……」

最後まで言い終わらないうちに千秋くんが焦っている理由がわかって、私も黙る。

「先輩……?」

「お、おう、じゃなかった……き、奇遇だね安藤さん」

「きゃーっ!先輩に名前覚えられてる!」

この声……生徒会の一年庶務の……。

よりによって千秋くんの大ファン……。

千秋くんも自分の熱烈なファンだと分かって頬をひきつらせている。

「そちらの方は?」

冷静になった安藤さんが私の背中を射止めて低い声でそう聞く。

「こ、この子は……かの……」

かの……?

も、もしかして……かの……じょ……?

嘘でしょ!?

それだけは断固阻止したくて、慌てて声を上げる。

「い、妹です!」

「え」

千秋くんが驚いて私を見るけど、私は容赦なく続ける。

「顔を見せれなくてごめんなさい。私、対人恐怖症で、ちあ……お兄ちゃんが居ないと外に出られないんです」

なるべく声も私に聞こえないように高めに出す。

お願い、騙されてっ……!

「……そうだったんですね!先輩の妹さんってことは絶対美人なんだろうな~」

良かった……。

「そうだね。僕の妹はとっても可愛いよ」

千秋くんがさっきの仕返しだと言うようにサラッとそう言って、私の心の中での驚きと、安藤さんの悲鳴が重なる。

えっ!?

「きゃーっ!妹を可愛がるお兄ちゃん先輩もいい!とてもいい!」

何を言っても会話が終わる気配がないのを感じ取ったのか、千秋くんは半ば強引に話を終わらせる。

「ごめんね安藤さん、妹が驚いてるから、そろそろ失礼するよ」

「あっ、はい!休日に逢えて光栄でした!ではまた、生徒会室で!」

終始笑顔で退散して行った安藤さん。

つ、疲れた……。

安藤さん、ほかの千秋くんのファンに比べたらいい子なんだけど……元気すぎてちょっと疲れちゃう……。

千秋くんも同じなのか、王子様スマイルのまま固まっている。