そのときの大会では残念ながら賞は取れなかったけど、小鳥遊(たかなし)部長はわたしに演じることの楽しさを教えてくれた。
 それはわたしにとって、大賞のトロフィーよりも大切なもの。

 ふだんはクールだけど、ひとたび舞台に立つと誰よりも熱い情熱をほとばしらせる小鳥遊(たかなし)部長。
 どんな役もカッコよく演じきる小鳥遊(たかなし)部長。
 そんな部長に、少しでも近づきたい。
 演じることの楽しさを教えてくれた感謝を伝えたい。
 いつまでも部長のとなりにいたい。
 だから、webアニメのオーディションを受けることにしたの。
 自分の声を出すことが苦手だったわたしが、ここまで成長できましたって部長に知ってほしくて。

 決して有名でも大きな作品ってわけでもない。
 市内の観光用のPRアニメーション。
 その主役のご当地ゆるキャラ役。
 内容はたった五分程度だけど。
 合格したら、webサイトや市内のいたるところで放送されるんだって。
 小鳥遊(たかなし)部長に、わたしの気持ちが、わたしの声が届いたらいいなって。
 そう思って、今まで練習がんばってきたんだ。

 神さま、もしわたしのことを見ていてくれているのなら。
 この願い、ぜったいに、ぜったいにかなえてほしいんです!