「わたしの、声が?」
「そう。だから、自信をもって演じてみな。もし、からかってくるヤツがいても、そのときはオレがボッコボコに負かしてやるから」
 勇ましく拳を突き上げる部長。
「ボッコボコに!?」
「あぁ、じゃんけん勝負でだけどな」
 大まじめにそう語る部長がおもしろくって、その心がうれしくて。
「ふふふっ、おかしい……」
 泣き顔から、とたんに笑顔になっちゃったんだ。

 そして、はじめて参加した夏の大会での公演。
 わたしは「銀河鉄道の夜」に出てくる乗客のひとり、小さな男の子の役。
 セリフも、出番もほんの少しだけだったけど、演じ終わったあとは、一生分のエネルギーを使い果たしたみたいにクタクタになってた。
 だけど、舞台が幕を閉じて、部長たちといっしょに、お客さんの前で礼をしたとき。
今まで聞いたことがないくらい大きな拍手と歓声が巻き起こって。
 その拍手と歓声に包まれているうちに、みるみるエネルギーが湧いてきたんだ。

 そのとき、はじめて分かったの。
 舞台に立つって、こんなに楽しいんだ。
 わたしも、役者の一員として力になれるんだ。
 今までイヤだな、恥ずかしいなって思っていたのが、一気にパーンとはじけとんで、これからもいろいろな役をやりたい! って気持ちに変わっていったの。