「うわぁ、カッコいい……」
 テレビや街のポスターを彩るモデルさんよりも。
 無数の声援を浴びる華やかなアイドルよりも。
 わたしの目には、誰よりも小鳥遊(たかなし)部長が光り輝いて見えたんだ。

「今日、来てよかったね!」
「うんっ!」
 友だちとふたりですっかり感激していると。
「なぁ、そこのキミ」
 なぜか、小鳥遊(たかなし)部長がわたしに声をかけてきた。
「ゴメンなさい! オジャマでしたか?」
「いや、そうじゃない。声がさ」
 声……? あぁ、そうか。
「あははっ、やっぱり気になりますよね。わたし昔からよく言われるんです」
 ヘンな声だなって――。

「いいな、キミの声。なんにでもなれそうで」
 え?
 わたしは、思わずポカーンと部長を見つめ返すことしかできなかった。
「明るくて、のびやかで。女の子にも、男の子にも、ばあちゃんにも、コロボックルにもなれそうだ」
 コ、コロボックル???
 これって、ほめられてる……のかな??? 

 部長はニッ、とわたしに笑いかけて。
「キミも、友だちといっしょにうちの部入んなよ。部員は多いにこしたことないから。今、特にやること決まってなかったら、その声、うちで役立ててみない?」
 
 わたしが、演劇?
 みんなの前で舞台に立つの?
 思いがけない言葉の連続に、正直わたしの頭はグルグル混乱してたけど。
「いいな、キミ。なんにでもなれそうな声してる」
 はじめて言われたその言葉が、ポンッとわたしの背中を押してくれたんだ。