ん?
 胸が、トクンッと鳴った。
 好きな子?
 好きな子って、まさか……?
 思いっきり振ったコーラの缶が開けられたみたいに、ドキドキが一気にわき上がってくる。

「ぶぶぶ部長! さっき言ってたことって――!」
 全身真っ赤になっているわたしに、小鳥遊(たかなし)部長はちょっとイジワルそうに口元をゆるめながら。
「ちゃんとセリフ全部覚えたら、もう一度言ってやる。今度はもっとロマンチックなシチュエーションでね。あさみんがオレのヒロインになってくれるの、楽しみにしてるから」
 と、耳元でささやいた。

「えええーっ!?」
 心臓が飛び上がるほど驚いてるわたしをよそに、
「さーて、もうそろそろみんな集まってくるな」
 部長はいつものように飄々(ひょうひょう)とした様子にもどっちゃった。
「今日もがんばるぞ、最高の舞台のために!」
 部室に部長の明るく高らかな声が響く。
 
 どうしようもない悲劇で終わるかと思ってたわたしの初恋。
 だけど、わたしにとってまったく予想外だった小鳥遊(たかなし)部長とのストーリーは、鳴りやまないほどの胸の鼓動とともに、今こうして幕を開けたのでした。

おわり