あの子と私

「頑張って慣れろよ。川野……。あ、俺も川野って言ったから、100円いいわ」


わざと……?
間違えたの。


「ありがとう。…トモ」


私がそう小さな声で言うと、トモは優しい目をして言った。


「出来るじゃん」


私はその言葉に恥ずかしくなって、照れ笑いする。


「あー、海が見えて来たよ!」


ヨシのテンションが上がり、トモと私は海に視線を向ける。

まだ少し遠い海は、太陽の光が当たってキラキラしていた。


海だ……。


何年振りだろう?

海に来るのは……。

海はどんどん近付いて来て、近付く度に三人は海に釘付けになり、盛り上がっていた会話が殆ど無くなる。

そして電車が止まった時、ヨシが飛び切りの笑顔で言った。


「着いた。早く行こうよ!」

「おお」


ヨシとトモは急ぎ足で歩き、私は必死になってそれを追いかける。


「アリス!早く」


トモが振り返りそう言うと、ヨシも立ち止り振り返る。

そして二人は目で何か合図すると、私の右側にトモ、左側にヨシが来て、腕を握り小走りで私を引っ張る。

トモから少し汗の匂いと、ヨシからは甘い匂いがしてドキドキした。