家を出ると急ぎ足で本屋に向かう。
本屋が近付くと心臓がバクバク鳴った。

本屋に入り、問題集が沢山並んでいる棚の前に立ち物色を始めると近くに同じ年頃の女の子達が楽しそうに話していた。

近くにいたら出来ない

早くあっちに行ってよ!!


少し時間が経つと女の子達はレジに向かい、私の周りには誰もいなくなった。


私は頭がいい。

だから誰も疑わないし、バレない。


やれ!


やるのよ!!


私は参考書に手を伸ばし、怪しまれないように周りを確認すると、鞄の中に参考書を入れた。


心臓の音が誰かに聞こえてしまいそうなくらい、音を立てて動く。


このスリルがたまらない


本屋の店番のおじさんは私に目を向けることもない。

そして何も無かったかのように、他の本棚も物色すると平静を装い本屋を出る。

今日もバレなかった。

スリルから快感へと変わっていく。

何か大きなものから解放されたような、この瞬間が堪らないんだ。


きっと


これを止めたら私は壊れてしまう……。


足取りを軽くして家に戻ると、何も知らない母親が言った。


「早かったわね」

「……勉強があるから」