「……?」

「余り溜め込むなよ」


私はその言葉に軽く頭を下げると、急ぎ足で家へと向かう。

家が近付けば近付く程、不安が大きくなった。


相川くんは本当に言わない…?

あんな風に言ってたけど、本当に言わないかなんて分からない。

どうしよう……。

明日学校に行ったら、クラスのみんなが知ってて、先生にもバレてたら私……。

もうT大なんて行けないかもしれないし、そしたら又お父さんとお母さんが喧嘩になってしまう……。

そして家に着くとキッチンで晩御飯を作る母親の所に急ぐ。


「あら、帰ってたの?気付かなかったわ」

「あのね、お母さん…」

「何?」

”今日クラスの男の子に万引きをしている所を、止められたんだ…”

私の気持ちなんて知らないで、母親は嬉しそうに笑顔で私に聞いた。


「欲しい参考書でもあるの?」


万引きの事なんて


言える訳がない。


「アリス…?」

「…ううん、何でもない。私、勉強頑張るから」

「分かってるわ」

「じゃあ、部屋に戻って勉強するから」

「ええ、頑張るのよ」


母親の言葉に少しだけ、息が詰まりそうになりながら私は何も変わらないような顔をして部屋に戻った。