私は、教室に向かう生徒たちとは別の道を進む。
人ごみを通るのが嫌な私は、いつも人通りの少ない渡り廊下を使っていた。
その方が遠回りなのだけれど、人ごみの真ん中に、
「あいつ」がいるのを、知っていたから。
…さっきまで、大目くんのキスを思い出して、切なくても幸せだったのに。
今は、「あの日」の「あいつ」の顔が頭から離れない。
中2のとき、「あいつ」も、大目くんと同じように、不思議なオーラを放っていて。
私は知らないうちに、その「きらきら」に引き寄せられていたんだ。
——「あの日」までは。
「……っ!」
「あいつ」の笑顔が頭の中に浮かんで、頭を矢で貫かれたような頭痛がした。
…なんで?
ずっと、「あいつ」のことなんて、頭から消すようにしていたのに。
大目くんをすきになり始めてから、
「あいつ」の顔がしょっちゅう出てくる。
邪魔、しないで。
ちゃんと、自分でこの気持ちは消すから、だから…——
…大目くんと私の間に、立たないで!!
また頭痛がして、私は思わず小走りになった。
…だから、気付かなかったんだ。
頭痛が私に、危険信号を出してくれていたのに。

