「はい、よろしくお願いします」
私がそう返した時、場内から拍手が起こった。
定刻通り客電が落ちて、SEが始まる。
小鳥のさえずりと、川のせせらぎの音が流れる。
スタッフの合図で、まずはサポートミュージシャンのみんながステージの定位置にスタンバイして、会場から拍手が起こった。
続いて私がステージの中央へ歩いていくと、会場から一際大きな拍手が起こった。
会場内を見渡すと、場内は満員。
こんなにたくさんの人達の前で歌うのは初めてだ。
拍手が響く中、由弦さんがアコースティックギターで1曲目のイントロを弾き始める。
春の空気のように柔らかくて爽やかな音色が、静かな会場に響く。
由弦さんのギターに合わせて、ハミングする。
私の声と由弦さんが奏でる音が重なって、綺麗なハーモニーになる。
途中から手拍子をしながら歌うと、客席からも少しずつ手拍子が起きて、だんだん会場中に広がっていく。
私の歌はバラード系が多くて、最初から最後まで総立ちでノリノリというコンサートではなく、座ってじっくり聴いてもらうスタイル。