「……って、あら、お邪魔だった?」

「あ、いえ、もう話は終わったので」

篠崎さんの言葉に由弦さんはそう言って、楽屋を出て行った。

閉じられたドアに視線を向けたままでいると、

「…ごめんね、結音ちゃん」

篠崎さんが申し訳なさそうに言った。

「…いえ…」

そう言いながら、さっきのことを思い出して急に鼓動が速くなる。

だって、もしもあの時篠崎さんが入ってこなかったら、由弦さんは―…

「せっかくのクリスマスイブだから、ふたりきりにさせてあげたいけど。このあと関係者参加の打ち上げでお店予約しちゃってるのよ。車出すから、着替えたら駐車場に来てね」

「…はい」

篠崎さんが楽屋を出ると、私は急いで衣装から私服に着替えて駐車場へ向かった。

その後、関係者も含めた打ち上げパーティーではみんな盛り上がって楽しい時間を過ごした。

由弦さんとふたりきりで過ごせなかったのは少しだけ残念だったけれど。