「いや、確かに突然で驚いたけど……」
由弦さんは、怒ってはいないものの、突然の私の訪問に戸惑っているみたいだ。
ここまで来たんだから、ちゃんと聞かなくちゃ。
「由弦さん、音楽活動休止するって本当ですか?」
改めて本人の前で口にしたら、緊張と不安のせいか声がかすかに震えた。
「え?」
まさか私が知っていると思っていなかったのか、由弦さんが“なんで知ってるんだ?”と言いたそうな表情で私を見た。
「篠崎さんから聞いたんです」
私の言葉に、由弦さんは納得したような表情を浮かべて。
「……本当だよ。琴吹さんとの件でたくさんの人達に迷惑をかけてしまったし。結音にも、嫌な思いをさせてしまったし。少し音楽から離れて、自分の人生を見つめ直そうと思ったんだ」
静かにそう言った。
やっぱり、本当なんだ……。
「辞めないでください。由弦さんは本当に才能があるし、憧れの存在なんです。これからも音楽活動を続けてほしいです……」
言いながら、思わず泣きそうになってしまった。