篠崎さんから話を聞いたあと、私の足は自然とある場所へ向かっていた。

目的の場所へ着くと、私は鞄からスマホを取り出した。

画面に表示された名前を見て、一度深呼吸をしてから発信ボタンを押す。

数回のコール音のあと、「……はい?」とためらいがちに電話に出る由弦さんの声が聞こえた。

「突然すみません、鈴原 結音です」

「うん。どうした?」

「話したいことがあって……。今、由弦さんのマンションの前まで来てるんですけど」

「……え?」

由弦さんが、かなり驚いているのが電話越しでもわかった。

今までお互い番号を知っていても電話すらしなかったうえに、マンションの前にいるなんて言われたら、驚くのも無理はないと思う。

「マンションの前ってエントランスの前?」

「はい」

「わかった。今行くから、待ってて」

そう言われて数分後、由弦さんがエントランスに来て、自室まで案内してくれた。

「ごめんなさい。突然マンションに押し掛けて、迷惑ですよね……」

勢いでここまで来てしまったけど、やっぱり迷惑だったかもしれない。