「……あの熱愛騒動、ヤラセだったの」
――!
思い切り動揺した私は手に持っていたポーチを落としてしまって、誰もいない静かな廊下に思っていた以上に音が響いてしまった。
「……結音!?」
ドアを開けて私がいることに驚いた声を上げたのは…由弦さんだった。
「今の話、どういうことですか……?」
かすれた声でそう尋ねた私に、由弦さんは黙ったまま視線を床に落とした。
「あ~あ、鈴原さんに聞かれてたんだ」
由弦さんの後ろから聞こえてきたのは、琴吹さんの声だった。
「とりあえず中で話そう」と言って由弦さんが私を控室に入れてくれた。
ドアを閉めると、
「さっきの話、結音にもちゃんと説明してほしい」
由弦さんがそう言ってくれて、琴吹さんは諦めたような表情で話し始めた。
両親が人気アーティスト同士だから売れて当たり前という声にずっと苦しんでいたこと。
そんな中で私のことを知って、業界内でも人気の高い由弦さんが私のことを気に入っていることを妬ましく感じていたこと。
そして、由弦さんとの熱愛報道は、社長と一緒に仕組んだものだったこと。