遠坂さんが私の歌に合わせてくれているっていうのも、もちろんあるんだけど。

それだけじゃなくて、きっとお互い持っている感性がすごく似ているんだ。

それぞれの曲のイメージや世界観を、言葉で説明しなくても音でわかりあえる感じ。

そして、イベント前日。

「よし、じゃあキリがいいから少し休憩しようか」

一通りの演奏を終えて休憩することになり、私は飲み物を買うため自販機へ向かった。

明日が本番だから、喉を痛めないように温かいものにしよう。

ホットココアを買ってリハーサル室に戻ると、遠坂さんはソファに座ったまま眠ってしまっていた。

毎日ハードスケジュールみたいだから、相当疲れているんだろうな。

起こさないようにそっと、部屋に置いてあったブランケットをかける。

キーボードの前に座って、ホットココアを飲みながら譜面を見て音を頭の中で確認していると、

「……カノン……?」

遠坂さんの声が聞こえた。

「あ、目覚めました?」

「ごめん、もしかして俺かなり寝てた?」

「ほんの15分くらいですよ。遠坂さんもハードスケジュールでお疲れですよね」