番組スタッフもマネージャーの篠崎さんも「いつもの結音じゃない」と心配していた。

いつも最高の歌を聴かせようとしている結音だけに、今日のことは本人も相当落ち込んでいるようだった。

収録が終わったあとの結音は、まるで魂が抜けたような状態で、今にも泣きそうだった。

このままそっとしておいた方がいいのかもしれない。

だけど、放っておけないと思う自分がいる。

何か悩みがあるなら、力になりたいと思う。

そう思うのは、この数ヶ月一緒に仕事をしてきた仲間だからなのか。

それとも……。

「遠坂さん!」

そんなことを考えていると、不意に後ろから名前を呼ばれた。

振り返ると、そこには笑顔の琴吹さんがいた。

「今日、私もここで仕事あったんですよ。さっき鈴原さんにも会って挨拶したんですけど」

「……え?」

結音と話した?

「あの子、ホントに素直っていうか…まだまだこの世界を知らないですよね」

「は?」

明らかにバカにしたような言い方だ。