「ん~…眠い~」
起こしてもまだ眠気が抜けないらしく、すぐに降りようとしない。
「もう着いたから、早く自分の部屋で寝なよ」
「は~い…」
まだねぼけているような声で返事をしながらタクシーを降りたものの、眠気と酔いのせいで足元がおぼつかない。
これじゃ、ひとりで部屋まで行けるかどうか心配だ。
“愛歌を頼みます。うちにとって今一番大事な歌姫なので”
社長に言われた言葉を思い出す。
「すみません、少し待っててもらえますか」
タクシーの運転手に声をかけて、車を降りた。
ホントはこんなことまでしたくはないけど、万が一何かあったら俺の責任になるわけで…。
とりあえず、部屋まで送ることにした。
時々ふらつく体を支えながら、なんとか部屋の前まで着いた。
さすがに部屋の中にまで入るのには抵抗があったけど、この様子だときちんと部屋の中に入るまで見届けた方が良いだろうと思い、部屋のドアを開けて中に入った。