少しずつ夏から秋へ変わり始めた9月。

早くも鈴原さんの新曲リリースとクリスマス・コンサートが決まり、ミーティングが行われることになった。

開始時刻よりも早めに会議室に向かうと、鈴原さんは既に席について真剣な表情でノートを広げていた。

「何してるの?」と声をかけると、鈴原さんは慌てて顔を上げた。

「新曲の詞を考えてるんですけど……」

「ああ、年明けにリリース予定の曲?」

「はい。でも、なかなかいいものが浮かばなくて……」

話している途中でスタッフさん達も部屋に入ってきて、そのままミーティングが始まった。

さっきの雰囲気からすると、鈴原さんはかなり悩んでいた感じがする。

もしかしたら、一度きちんと話を聞いてあげた方がいいかもしれない。

ミーティング終了後、珍しく悩んでいる様子の結音に声をかけて話を聞いたら、彼女もまだデビュー2年目なんだと改めて感じた。

いつも礼儀正しくしっかりとしていて、自分の世界観をしっかり持った歌を歌っているけれど、自分より売れている同年代の子と比べて落ち込むこともあるんだ。