お茶を買いに行く、と言いつつしっかりお弁当も持って教室を出る。
もちろん、有島くんを追うため。
先輩とご飯を食べるならそれでもいい。けど、嘘をついてるかもしれないから。
有島くんには気付かれないように、コソコソと有島くんのあとを追う。
すると有島くんは人気のない、旧校舎の方へ向かって歩いていった。
……あれ?旧校舎って立ち入り禁止…っていうか、鍵がかかってて入れないはず。
物陰から覗いてたら、有島くんがキョロキョロと辺りを確認し、
ポケットからなにかを取り出して、ガチャリとドアの開く音がした。
「……え?」
「……はっ?」
思わず飛び出してしまった私に気付いて、一瞬焦った顔をする有島くん。
でも出てきたのが私だと気付いて、ほっとしたような顔になった。
「なんだ、坂井さんか…」
「あ、はい、坂井です」
「……なにしに来たの。
もしかして俺のあとつけてきた?」
有島くんの問いにコクコクとうなずくと
有島くんははぁ〜…とわかりやすくでっかいため息をついた。
「えっと…一緒に食べる先輩は?」
「……そんなのいない」
「やっぱり」
そうじゃないかとは思ってたけど。
なんだか面白くて、うひひ、と笑うと
有島くんは『うざ』と返してきた。