「有島くん、お昼一緒に食べよー」

「………」


お昼休み。

お弁当を持って有島くんのもとへ向かうと、

有島くんがまわりにはバレないよう、私にだけ見えるように心底嫌そうな顔をする。

そしてすぐにニコッと無理やり笑顔を作った。


「ごめんね坂井さん。
僕いつも先輩と食べる約束してて」

「あ、そうなんだ」


友達いないと思ってたけど

先輩で友達の人がいるのかな?


「じゃあ僕行くね」


お弁当が入っているであろうランチトートを持って教室を出ていく有島くん。

残された私は、クラスメイトからたくさんの視線を浴びていた。


「……おいゆず!
おま…なんで有島に話しかけてんだよ!」

「そうだよゆずちゃん!
なにしてるの!?」


有島くんがいなくなったのを確認すると、秋斗と瑠花が詰め寄ってくる。


「えー…っと」


有島くんは高嶺の花だから、話しかける人なんてほとんどいない。

それなのに『お昼一緒に食べよう』なんて誘うなんて、妬まれる対象になるかも。


「……あ!お茶持ってくるの忘れた!
買いに行ってくる!」


でも、私は“友達”になったんだから、遠慮する必要なんてない。